2019年4月16日(火)-4月25日(木)
basara 絵を纏う/有月の絵と衣装

ミクロコスモスとマクロコスモスの間に重なり合う無数の渦を増殖させる有月の作品群。
黒と金の魂のコレオグラフィー。抽象の中に生まれくる無数のランドスケープ。

2019年4月16日(火)-4月25日(木)12:00-18:00 月休廊

各界の方からコメントをいただきました

レオナルド・ダ・ヴィンチは、その晩年、大洪水による世界の没落の幻想にとらえられ、大地を浸食する凄まじい水の渦を描き続けた。有月の繊細にして奔放なドローイングは、レオナルドのそれに似て、しかし世界の没落というよりはむしろ世界の生成を司る形象のように思われる。渦はまた螺旋でもあり、これは有機無機を問わず自然界を貫く根本的な線的形象かもしれないのである。有月の作品を前にして感動するとすれば、それは文字どおりわれわれの内なる生命を貫く線的形象が共鳴しているからにほかなるまい。
谷川渥(美学)

どこから始まってどこで終わったのか? 観る者は有月の流麗な筆の輪舞の中に、起点と終点を探してしまう。
墨が音楽しているのだ。葬送曲なのだ。
見えてくる線の生涯が切なく心を揺さぶるのは、その調べのためである。
萩原朔美(映像作家・多摩美術大学名誉教授)

21世紀に入って、「琳派」の概念は偏狭で自閉的な日本美術史の枠組みを超えて、いまや世界的に共有されつつある。それはおそらく、澁澤龍彦が喝破したように、「マニエリスム」と同義なのだ。尾形光琳の『紅白梅図』の乱流・渦の探究にはじまり現在まで、時間と国を超えて間歇的に現れる、その「未完の琳派」の系譜に、渦の絵師・有月の「画」はつらなっている。

石黒敦彦(サイエンス・アート研究者)

有月 UGETSU profile

1987第3回西武美術館版画大賞展
1988第64回国際版画写真展(フィラ デルフィア)買い上げ賞
1988クラコウ国際版画ビエンナーレ(ポーランド)
1988日本具象版画展 池田満寿夫賞
1988版画期待の新人作家大賞展 伊勢丹美術画廊 買い上げ賞
1988第17回日本国際美術展
1981さっぽろ国際現代版画ビエンナーレ 札幌グランドホテル賞
1993さっぽろ国際現代版画ビエンナーレ オンワード樫山賞
1994東京アメリカンクラブ(麻布)ギャラリー 個展
2011植物筆によるドローイングを制作

*コレクション/富山県立近代美術館、伊勢丹美術画廊、富士ゼロックスアートコレクション他